子どもと虫刺され|なぜ腫れやすい?いつまで続く?
はじめに
夏になると、蚊やブヨなどの虫に刺された所が強く腫れるお子さんを見かけます。
「こんなに腫れて大丈夫?」と心配になる親御さんも多いのではないでしょうか。
実は、子どもの虫刺されが腫れやすいのには、医学的な理由があるのです。
今回は、小児の虫刺されの特徴や、腫れが続く期間、そして予防方法について、わかりやすく解説します。
なぜ子どもは虫刺されで腫れやすいのか?
虫に刺されたとき、大人よりも子どものほうが強く腫れたり赤くなったりすることがあります。
これは単なる体質の違いではなく、子どもの体や免疫の仕組みに関係しています。
① 初めての感作による反応の強さ
子ども、特に乳幼児は、虫の唾液に含まれるたんぱく質などの異物に初めて触れることが多い時期です。
免疫はこの“はじめての出会い(感作)”で、異物を「敵だ」と判断すると、必要以上に強く反応してしまうことがあります。
虫の唾液にまだ慣れていないため、体が過剰に反応してしまうのです。
② 皮膚のバリア機能が未熟
小児の皮膚は大人に比べて薄く、水分を保ったり外からの刺激を防いだりする「バリア機能」がまだ発達途中です。
そのため、虫の唾液中の成分や毒素が皮膚の奥まで入り込みやすく、免疫がそれを察知して炎症反応を強く起こすことがあります。
③ アレルギー体質との関連
アトピー性皮膚炎など、もともとアレルギーの傾向があるお子さんは、免疫が少しの刺激にも過敏に反応しやすい状態です。
そのため、虫刺されでも通常よりも腫れたり、水ぶくれやかゆみが強く出たりすることがあります。
何歳頃まで続くの?
一般的には、幼児期〜学童期に虫刺されへの反応が強く出やすいですが、
感作が進むと免疫が“慣れ”、学童期〜思春期にかけて徐々に反応は軽くなる傾向があります。
ある研究では、平均9.5年で臨床症状が自然消退したという報告もあります。
余談:スキーター症候群と小児ストロフルス
虫刺されに対して特に強い反応が出る病態として、
「スキーター症候群」や「小児ストロフルス」というものがあります。
スキーター症候群は、蚊に刺されたあとに5cm以上の大きな腫れや強い熱感、水疱を生じるもので、
ときには発熱やリンパ節の腫れといった全身症状を伴うこともあります。
IgE抗体やT細胞による免疫反応が関与し、アトピー体質のあるお子さんに多く見られます。
小児ストロフルスは、ノミやダニなどの虫刺されがきっかけで、
刺された場所以外にも虫刺されのような丘疹や水疱が多発する病態です。
こちらも乳幼児期に多く、アレルギー傾向があるお子さんで起こりやすいといわれています。
虫刺されの予防
虫刺されを予防するためには、いくつかの対策を組み合わせて行うことが大切です。
まず、ディートやイカリジンを含む虫除けスプレーを適切に使用し、虫が近づくのを防ぎます。
肌の露出をできるだけ避ける服装を心がけ、室内では網戸や蚊帳を活用し、蚊取り線香で虫の侵入を防ぎましょう。
また、草むらや水たまりなど、虫が集まりやすい場所を避けるようにするとより安心です。
これらの対策を組み合わせて行うことで、より効果的に虫刺されを防ぐことができます。
まとめ
子どもが虫刺されで腫れやすいのは、皮膚や免疫の未熟さ、アレルギー体質の影響、そして初感作の段階にあることが大きな理由です。
年齢とともに徐々に反応は軽くなっていくことが多いですが、
強い反応や繰り返す腫れが見られる場合は、皮膚科専門医の診察をおすすめします。
参考文献
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