湘南ジンベエ皮膚科

乾燥肌・皮脂欠乏性湿疹





乾燥肌・皮脂欠乏性湿疹

冬が近づいてくると、肌がカサカサとして、かゆくなることはありませんか?こうした症状は「ただの乾燥肌だから仕方ない」と思われがちですが、実は「皮脂欠乏性湿疹」に陥っているかもしれません。特に高齢の方や、乾燥しやすい環境で生活している方は注意が必要です。

このページでは、皮脂欠乏性湿疹の症状や原因、治療法、日常生活でのケアについて詳しくご紹介します。

乾燥肌と皮脂欠乏性湿疹

乾燥肌とはその名の通り、肌が乾燥している状態です。続いて皮脂欠乏性湿疹とは、乾燥肌によって皮膚のバリア機能が低下し、かゆみや炎症などが現れる皮膚疾患のことを指します。健康な皮膚は、皮脂膜で覆われていることで水分の蒸発や外部の刺激から守られています。しかし、加齢による皮脂分泌量の低下、空気の乾燥、過度な洗浄などにより皮脂膜が減ってしまうと、肌は水分を保てず乾燥が進行し、かゆみや湿疹といった症状が現れるようになります。

主な症状

皮脂欠乏性湿疹の症状は、以下のように段階的に現れます。

1. 乾燥・かゆみ

皮膚がカサカサし、つっぱり感やかゆみが出ます。特に夜間や入浴後にかゆみが強くなることがあります。

2. 粉をふく・カサカサ

古い角質が白い粉状になって剥がれ落ちます。皮膚科では、これを落屑(らくせつ)と呼びます。服に、白い粉が付着して気づくこともあるでしょう。

3. 赤みや湿疹の悪化

かゆみに耐えきれず掻いてしまうと、湿疹や皮膚の亀裂(ひび割れ)が生じます。あまりに症状が強いと傷から水分が滲み出てきてしまうこともあります。

皮脂欠乏性湿疹になりやすい部分

最も皮脂欠乏性湿疹になりやすいのは「すね」。これは、すねには元々皮脂腺が少ないからです。すね以外でも、腕・わき腹・その他全身で発症することもあります。また、冬は空気が乾燥するため特に症状が出やすいです。

治療について ①保湿

皮脂欠乏性湿疹の治療は、「保湿」と「炎症やかゆみのコントロール」が基本です。

保湿剤は、肌の水分を保ち、バリア機能を整えることで、さまざまな皮膚トラブルを予防・改善する大切なお薬です。皮膚科では、以下のような保湿剤を症状や年齢に応じて使い分けています。

1.プロペト(白色ワセリン)

特徴:

・皮膚を外部刺激から守る「保護膜」のような働きをします

・刺激が非常に少なく、赤ちゃんからご高齢の方まで安心して使えます

・無香料・無添加で、アレルギーの心配も少ない保湿剤です

・ベトつきが強いので、外出先など、使いにくい場合があるのが難点です。

こんなときにおすすめ:

・とにかく肌を刺激したくないとき

・赤みやかゆみが強く、他の保湿剤がしみる場合

・乳児や小さなお子さんへの保湿ケア

2.ヒルドイド(ヘパリン類似物質)

特徴:

・皮膚を外部刺激から守る「保護効果」だけでなく、皮膚の水分を保つ「保湿効果」もあります

・しっとりとした使用感で、比較的短時間で肌に馴染みます

・剤型が油性クリーム・ローション・泡・スプレーなど豊富です。(先発品かジェネリック品かによって、剤型は異なります)

こんなときにおすすめ:

・保護膜を張るだけでなく、肌に潤いを持たせたい

・ベトつきにくい保湿剤を使用したい

3.尿素配合外用剤(ウレパール、パスタロンなど))

特徴:

・尿素には「角質を柔らかくする作用」があり、硬くなった肌をなめらかにします

・水分を引き寄せる保湿効果もあるため、乾燥とごわつきが同時に気になるときに便利です

こんなときにおすすめ:

・カサカサして粉をふいている

・皮膚がごわごわ、硬くなっている

・すねやかかと、ひじなどの乾燥が目立つ

・ウオノメやタコに塗りたい

+α.保湿剤の使い方のポイント

どの保湿剤にも共通して言えることとして、肌がしっとりする程度まで塗りましょう。

その際、すり込まず「優しくなでるように」塗ることが大切です。

治療について ②炎症やかゆみのコントロール

1.ステロイド外用薬

炎症が強い場合には、医師の判断でステロイド外用薬を併用します。かゆみや赤みを抑える効果があり、保湿剤と一緒に使うことで改善が早まります。医師の指示に従い、用法・用量を守って使いましょう。

2.抗アレルギー薬の内服

かゆみが強い場合には、かゆみを抑える内服薬(抗ヒスタミン薬)を使用することもあります。皮脂欠乏性湿疹を根本的に治す効果はありませんが、補助的な治療として用いられます。

毎日のスキンケアと生活習慣で予防を

皮脂欠乏性湿疹は、日々のちょっとしたケアでも予防・改善が可能です。以下のような注意点を、お肌のケアの参考にしていただけると幸いです。

1.入浴時の注意点

・石けんは低刺激性のものを選ぶ

・ナイロンタオルは使わず、手や綿タオルでやさしく洗う

・入浴後はこすらず、やさしく水分を拭き取り、保湿する

2.室内環境の整備

・冬場は加湿器などを使用し、室内の湿度を高く保つ

・エアコンの風が直接当たらないように工夫する

・綿素材の肌着や寝具を選ぶ

まとめ

皮脂欠乏性湿疹は、肌の乾燥によって誰にでも起こりうる身近な皮膚疾患です。とくに高齢の方や乾燥しやすい時期には発症しやすく、放っておくと炎症がひどくなることもあります。しかし保湿をこまめに行い、生活環境やスキンケアを見直すことで多くの症状は改善します。もし、かゆみや赤み、ひび割れなどが気になる場合は、ぜひお早めにご相談ください。

参考文献

Rajkumar J, Chandan N, Lio P, Shi V. The Skin Barrier and Moisturization: Function, Disruption, and Mechanisms of Repair. Skin pharmacology and physiology 36, no. 4 (2023): 174-185.






執筆医師紹介


─執筆医師─

達也執筆profire

塩味達也
湘南ジンベエ皮膚科 院長|日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2013年埼玉医科大学卒業後、大学病院・がんセンター・総合病院・地域クリニックで皮膚科診療に従事。現在、湘南ジンベエ皮膚科院長。医療記事Webライターとしての執筆歴も豊富。


よくあるご質問

皮脂欠乏性湿疹は人にうつりますか?
いいえ。うつる病気ではありません。
子どもや若い人でもなりますか?
はい、乾燥が強ければ誰でも発症する可能性があります。
市販薬でも治せますか?
軽症なら市販の保湿剤で改善することもあります。症状が強い場合や長引いている場合は皮膚科を受診しましょう。
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