多汗症
多汗症とは
汗は体温調節のために必要な生理現象です。暑いときや運動時に汗をかくことは自然な反応です。
一方で、気温や運動量に関係なく、日常生活に支障が出るほど汗が多く出る状態を「多汗症」と呼びます。
「体質だから仕方ない」「我慢するしかない」と感じている方も多いですが、汗による困りごとが続く場合、治療を検討できる可能性があります。

多汗症でよくみられる症状と悩み
・手汗で紙や書類が濡れてしまう
・スマートフォンやタブレットの操作がしづらい
・脇汗で服の色や素材を選べない
・顔汗や頭汗で人目が気になる
・緊張すると汗が一気に増える
多汗症の診療では、汗の量だけでなく、生活への影響の大きさを重視します。
多汗症の種類(原発性多汗症と続発性多汗症)
原発性多汗症
明らかな原因となる病気がなく、思春期から若年成人期に発症することが多いタイプです。
手のひら(手汗)、足の裏、脇(脇汗)、頭部や顔(顔汗)など、特定の部位に左右対称に強い発汗がみられます。緊張やストレスで悪化しやすい傾向があります。
続発性多汗症
他の病気や体調変化、薬剤の影響が原因で起こる多汗です。
・甲状腺機能亢進症
・糖尿病
・感染症
・更年期障害
・薬剤の副作用
全身に汗をかく、夜間にも大量の汗が出る、急に症状が強くなった場合は原因検索が必要です。
原発性局所多汗症の診断基準
原発性局所多汗症は、局所的に過剰な発汗が明らかな原因のないまま6か月以上認められ、次の項目のうち2つ以上が当てはまる場合に疑われます。
・発症が25歳以下である
・左右対称性に発汗がみられる
・睡眠中は発汗が止まっている
・1回/週以上の多汗のエピソードがある
・家族歴がみられる
・それらにより日常生活に支障をきたす
最終的な診断は、症状の経過や生活への影響、他の病気の可能性を含めて医師が総合的に判断します。
手汗(掌蹠多汗症)の治療
手のひらや足の裏の多汗は、日常生活や仕事、学業に大きな影響を与えることがあります。
・抗コリン薬外用療法(手の多汗症にて保険適用)
汗を出す神経の働きを抑え(汗をだそうとするスイッチを一時的に抑え)、継続使用で発汗を軽減します。
・塩化アルミニウム外用療法
汗腺の出口に作用して発汗を抑えます。刺激感やかぶれを起こすことがありますが、比較的安全に使用できる塗り薬です。
・イオントフォレーシス
水道水に手足を浸し、微弱な電流を流す治療です。継続が必要ですが、副作用が比較的少ない方法です。ただし、この治療を行えるクリニックや病院は限られており、事前に確認が必要です。また、1回で改善する治療ではないため、何度も通院が必要となります。
・抗コリン薬の内服
全身の発汗を抑えますが、口渇や便秘などの副作用が出ることがあります。そのため、副作用に留意して内服する必要があります。
脇汗(腋窩多汗症)の治療
脇汗は衣類の汗染みやにおいの不安につながり、服装や外出を制限してしまうことがあります。
・抗コリン外用薬(保険適用)
汗を出す神経の働きを抑え(汗をだそうとするスイッチを一時的に抑え)、継続使用で発汗を軽減します。エクロックゲル®とラピフォートワイプ®という二種類の製剤があります。
・塩化アルミニウム外用
汗腺の出口に作用して発汗を抑えます。刺激感やかぶれを起こすことがありますが、比較的安全に使用できる塗り薬です。軽症の場合に使用されることがあります。
・ボツリヌス毒素治療
一定期間(約3~6ヶ月程度)、発汗を抑える効果が期待されますが、効果や持続期間には個人差があります。何か所も注射から有効製剤を皮膚に入れる必要があるため、処置中には痛みを伴います。
・その他の治療
医療機器による施術(マイクロ波・レーザー・フラクショナルマイクロニードル高周波・高密度焦点式超音波等の医療機器)による治療もひとつの選択肢です。保険適応はありません。
また、手術という選択肢もありますが、侵襲が高く副作用もあるため、他治療の効果が認められなかった場合に検討すべきとされています。
顔汗・頭汗(頭部顔面多汗症)の治療
顔や頭部の多汗は人目につきやすく、心理的な負担が大きくなりやすい症状です。
・塩化アルミニウム外用
汗腺の出口に作用して発汗を抑えます。刺激感やかぶれを起こすことがあるため、顔面では他部位の多汗症と比較して推奨度は低いです。
・抗コリン薬の内服
全身の発汗を抑えますが、口渇や便秘などの副作用が出ることがあります。そのため、副作用に留意して内服する必要があります。
まとめ
多汗症(手汗・脇汗・顔汗)は、我慢するしかない体質ではありません。生活への支障がある場合は、治療や対策を検討できる状態です。一人で悩まず、医療機関で相談することが大切です。

新聞や雑誌でのコラム執筆経験もあり、「塗るを楽しく」を合言葉にした絵本も製作中です。