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虫除けについて





虫除けについて

虫刺され

虫除け(むしよけ)に関すること

夏になると増えてくる「虫刺され」。蚊やブユ(ブヨ)などの虫に刺されると、腫れてかゆくなるのはもちろんのことですし、時に皮膚炎や感染症の原因になることもあります。実際、虫に刺された部位がひどく腫れてしまって皮膚科を受診される患者さんは少なくありません。特にお肌が敏感な方や、屋外で過ごす機会の多い方は、できるだけ虫に刺されないよう予防したいですよね。

そんなときに役立つのが「虫除けスプレー」ですが、実は使用されている成分にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴や注意点があります。製品によって効果や安全性も異なるため、ご自身やご家族に合ったものを選んでもらいたいです。

この記事では、虫除けスプレーの主な成分の違いや使い分けや、蚊取り線香に関することなど、医師の立場からわかりやすく解説したいと思います。

虫除けスプレー

虫除けスプレーに含まれる主な成分

日本で市販されている虫除けスプレーに含まれる成分は、ディート・イカリジン・その他の3種類に分類できます。どれも虫を殺す効果はなく、虫を寄せ付けなくする成分です。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

①ディート(ジエチルトルアミド)

ディートは最も広く使用されている虫除け成分の一つです。蚊・ブヨ・マダニだけでなく、アブやヒルの一部にも効果があるとされています。濃度が高いものほど持続時間が延びるという特徴があります。(濃いほど効果が強いわけではありません。)そのため、濃度に合わせてつけ直す間隔を調整するのが理想的な使い方です。ディートの濃度と持続時間の関係を表にすると、以下のようになります。

ディート

※効果持続時間は汗・摩擦・気温・虫の種類によっても異なりますので、あくまでも目安と考えてください。

なおディートには特有のにおいやべたつきがあることと、プラスチック製品や合成繊維を傷めることがある点に注意しましょう。また、小さなお子様に対してディートを使用する場合には、年齢や使用回数に制限があるため注意が必要です。厚生省の発表しているガイドラインには、以下の注意点が記されています。

小児ディート

② イカリジン

イカリジンは、日本においては2015年ごろから流通した、比較的新しい虫除け成分です。蚊・ブヨ・マダニにはよく効きますが、アブやヒルへの効果はディートに比べると劣ります。イカリジンもディートと同様に、高濃度の方が効果持続時間も長いですが、効果自体にあまり差はありません。また、低刺激でにおいやべたつきも少ないことがイカリジンの特徴です。小児への使用制限がないことからも、最近は人気が高まっています。

イカリジン

③ ディートとイカリジンの違いまとめ

ディートとイカリジン

大体の目安として、30%のディートと15%のイカリジンの虫除け効果は同等とされています。そのため虫除け効果自体に大きな差はないと考えて大丈夫です。

ご自身の使用するシーンに合わせて種類や濃度を選び、数時間おきの塗り直しを意識しながら使用すると良いと思います。

④ その他の成分

・植物由来成分(レモンユーカリ油、シトロネラ、ハッカ油など)

天然由来の虫除け成分です。虫が嫌う香りで、虫を寄せ付けない効果があると考えられています。「天然由来であれば、何となくお肌に良さそう」と思うかもしれませんが、かぶれる可能性もあり、特別安全性が高いというわけではありません。

なおディートとイカリジンは「医薬部外品」であるのに対し、植物由来成分の虫除けは「化粧品」に分類されます。医薬部外品は成分の有効性が科学的に証明されていますが、化粧品の有効性は証明されているわけではありません。

個人的には、ディートやイカリジンを優先して使いつつ、虫除けの効果を少しでも強くしたい場合に植物由来成分の虫除けも併用するのが良いと思います。

・IR3535(エチルブチルアセチルアミノプロピオン酸)

主に欧米で使用されている成分で、皮膚刺激が少なく小児にも使用可能と言われています。ただ、まだ日本では流通していません。(2025年現在)海外で虫除けスプレーを購入する際には、選択肢に入ってくると思います。

虫除けの使い方

①どこにつけるか

虫除けを使うとき、「どこに塗るか/スプレーするか」はとても大事です。虫が刺してくる場所を意識し、特に露出している肌はしっかりカバーしましょう。ただし粘膜に入ると刺激が強いので、顔に塗る際は一度手に出したものを塗るようにしてください。なお、塗りムラをなくすことで忌避効果が高まるため、肌が露出している部分は丁寧に塗るよう心がけましょう。

②肌に直接だけでなく、衣服やカバンにつけても良い

虫除けは、「肌に直接塗る/スプレーする」だけでなく、「衣服やカバンなどの持ち物にスプレーする」使い方もOK です。帽子、ズボンの裾、靴下、リュックの肩ひも、ベビーカーのカバーなどへの使用も有効です。

ただし、肌に直接使うタイプ(ローションやシートタイプなど)は、衣類には不向きです。また、皮革、化学繊維、プラスチック製品、時計・アクセサリーなどにつくと、変色や劣化の原因になることがあります。

製品によっても向き不向きがありますので、使用前にパッケージの表示を確認しましょう。

③日焼け止めを先に、虫除けは後に

両方塗る際は、日焼け止めを先に、虫除けは後からつけるようにしてください。

虫除けは虫を寄せ付けない香りを発するため、日焼け止めでフタをしない方が良いという理由です。

実はこの説明の科学的根拠となるデータは少ないのですが、米国皮膚科学会や米国疾病予防管理センターもこの順番の塗り方を推奨しており、世界的にも広く受け入れられている考え方です。

もし間違えて逆の順番で塗ってしまってもそこまで問題はないと思いますが、気になる場合は最後にもう一度虫除けをつけておきましょう。

まとめ

個人的な意見ではありますが、日本国内で日常的に使う虫除けは、年齢問わず使用できて使用感も良い「イカリジン」がオススメです。アウトドアレジャーや登山に出かける際などは虫に刺される可能性が高まるため、ディートの使用も検討すると良いでしょう。いずれにせよ広範囲にムラなく塗り、さらに数時間に一度は塗り直して虫刺されを予防しましょう!

Q&A

Q:蚊取り線香も虫除けの一種ですか?

A:蚊取り線香や電気式の蚊取り器は、ここまでで説明した虫除けスプレーとは異なります。虫除けスプレーは「虫が嫌いな匂いで、虫を寄せ付けない」ものであるのに対して、蚊取り線香は「虫が死に至る成分を空気中に撒く」ものです。

お家の庭で作業する時などは虫除けスプレーをかけるだけでなく、蚊取り線香を焚いておくとより一層虫に刺されにくくなると思います。虫が多い場所に出向く際は首や腰に吊り下げるタイプの蚊取りも便利だと思います。

Q:違う種類の虫除けを併用しても大丈夫ですか?

A:有効成分自体が反応して害になるということはないようですが、推奨もされていません。また万が一虫除けにかぶれてしまった場合、どれが原因だが分かりにくくなるというデメリットもあります。