湘南ジンベエ皮膚科

蕁麻疹





蕁麻疹(じんましん)

ある日突然、肌が赤くボコボコと盛り上がり、かゆみを感じた経験はありませんか?もしかするとそれは「蕁麻疹(じんましん)」という病気かもしれません。

蕁麻疹は、おそらく誰もが一度は耳にしたことがある病気ではないでしょうか。蕁麻疹は誰にでも起こりうる身近な皮膚トラブルのひとつですが、湿疹とはまったく違う病気です。この記事では、蕁麻疹について簡単にご説明していきます。

蕁麻疹の原因と悪化のきっかけ

まずは蕁麻疹の原因についてご説明します。・・・と言いたいところですが、実は蕁麻疹というのは原因を特定するのが非常に難しい病気です。そのため原因不明と説明せざるをえないことが多いです。(原因がわからない場合、特発性蕁麻疹とよんでいます。)

蕁麻疹は何らかのアレルギーで発症するイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実際にはアレルギーは関係ないことが多いです。蕁麻疹の原因には、肌への摩擦・圧迫などの物理的刺激によるものや、温度変化によるもの、運動・体温上昇・発汗などに対する過敏性によるもの、ストレスや疲れによるものなどがあり多岐に渡ります。また明らかな誘因がない蕁麻疹も多く存在します。そのため、血液検査で簡単に蕁麻疹の原因が分かるということは、なかなかありません。

また蕁麻疹の直接的な原因というわけではありませんが、体を温めると蕁麻疹の症状が悪化するきっかけになるといわれています。蕁麻疹でお困りの方は、熱いお風呂への入浴や長風呂、激しい運動、飲酒などは避けた方が良いでしょう。

蕁麻疹の診察

・問診

蕁麻疹を疑った場合、まずは具体的な症状・蕁麻疹が出るきっかけや状況・発症前の食事内容・薬・生活習慣などを詳しくお伺いします。なお診察のタイミングにはちょうど症状が無いこともあると思いますが、症状が出ているタイミングの写真を持参いただければ診断の手助けになるかもしれません。写真はご自身のスマホにてお撮りいただいたもので結構です。

・検査

問診の結果から、特定の食べ物や薬などが原因として疑われる場合(例:生卵を食べると必ず蕁麻疹が出るなど)には、必要に応じて血液検査などを行うことがあります。また、蕁麻疹の裏に別の病気が隠れている可能性がある場合や、蕁麻疹とよく似た他の病気が考えられる場合にも、検査が必要になることがあります。

注意が必要なのは、やみくもに検査をしても蕁麻疹の原因ははっきり分からないことが多いという点です。「蕁麻疹が出たら必ずアレルギー検査をする」という診療スタイルは日本皮膚科学会も推奨しておらず、当院でも不要な検査は行っておりません。症状の経過や生活習慣を丁寧に伺いながら、必要な検査を判断しています。

治療法

蕁麻疹の治療の基本は、抗ヒスタミン薬の内服です。これは、かゆみや腫れの原因となるヒスタミンという物質の働きを抑える薬で、多くの方に効果があります。また蕁麻疹が一旦落ち着いたように見えても、すぐに内服を中止すると再燃するケースが多いため、まずは処方の通り内服を継続しましょう。

蕁麻疹は2週間程度で症状が落ち着くことが多いですが、長引く場合は抗ヒスタミン薬の種類を変えるなどの調整を行なっていきます。抗ヒスタミン薬で十分な治療効果が得られない場合や症状が重い場合は、以下のような治療を併用することもあります。

・短期的なステロイド薬の使用(内服・外用):炎症を抑える強力な作用がありますが、長期使用には注意が必要です。

・生物学的製剤(オマリズマブ):難治性の慢性蕁麻疹に対して、使用することがあります。当院でも取り扱っています。

・塗り薬に関して:かゆみを抑える目的で処方することはありますが、蕁麻疹を出なくする効果は期待できません。あくまでも補助的に使用します。

いずれの治療も、症状の程度や持続期間、そして治療効果をみながら薬の継続や中止の判断をしていくことが大切です。

まとめ

蕁麻疹に限ったことではありませんが、かゆみを耐えるのはとても辛いことですよね。当院では、蕁麻疹の症状を少しでも緩和するための治療をご提案します。蕁麻疹は原因が分からないことも多々ありますが、幸いなことに有効な治療薬が数多く存在します。あせらずに一緒に治療をしていきましょう。

参考文献

・日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン2022」

・厚生労働省 eJIM「アレルギーと食物」

・Zuberbier T, et al. The EAACI/GA²LEN/EDF/WAO Guideline for the Definition, Classification, Diagnosis and Management of Urticaria. Allergy. 2018.

・Kaplan AP. Chronic urticaria: pathogenesis and treatment. J Allergy Clin Immunol. 2004.






執筆医師紹介


─執筆医師─

達也執筆profire

塩味達也
湘南ジンベエ皮膚科 院長|日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2013年埼玉医科大学卒業後、大学病院・がんセンター・総合病院・地域クリニックで皮膚科診療に従事。現在、湘南ジンベエ皮膚科院長。医療記事Webライターとしての執筆歴も豊富。


よくあるご質問

蕁麻疹が出ているとき、日常生活で気をつけることはありますか?
体を温める様な行動(熱いお風呂への入浴や長風呂、激しい運動、飲酒など)は控えましょう。原因が判明している場合は、原因物質も避けるようにしましょう。また、かゆみを我慢せずに掻いてしまうと、そこから傷や湿疹になることもあるので注意しましょう。
蕁麻疹が出たとき、食事に制限はありますか?
特定の食品が原因である場合、医師の判断のもとで除去することがあります。ただ本当にアレルギーが関与しているケースは稀であり、「とりあえず除去」的な食事制限は生活の質が下がるだけで有効性が乏しいと考えられています。
蕁麻疹は他の人にうつりますか?
いいえ、蕁麻疹は感染症ではないため、人にうつることはありません。ただし、風邪などの感染症をきっかけに蕁麻疹を発症することはあります。
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