
接触皮膚炎
接触皮膚炎は、私たちの皮膚が、ある物質に触れることで炎症を起こす病気です。洗剤、化粧品、金属、植物など、身の回りにあるさまざまなものが原因になります。接触皮膚炎は誰にでも起こる可能性がある身近な皮膚トラブルの一つです。この記事では、原因、症状、治療、予防について、わかりやすく解説します。
接触皮膚炎の2つのタイプ
まず、接触皮膚炎には主に2つの種類があります。(※正確にいうと他にもありますが、少し話が複雑な為、ここでは割愛します。)
①刺激性接触皮膚炎
洗剤やシャンプーなどの「刺激の強い物質」が皮膚に触れて炎症が起こるものです。皮膚のバリアが壊れることで誰でも発症する可能性があります。
②アレルギー性接触皮膚炎
特定の物質(アレルゲン)に対して体がアレルギー反応を起こすことで生じます。原因は人それぞれで、金属(ニッケルなど)や化粧品、植物、ゴム、香料などが多いです。最初は症状が出なくても、何度も触れるうちに突然症状が出ることもあります。
主な症状
接触皮膚炎の症状は、原因物質に触れた場所に以下のようなものが見られます。
・かゆみ、赤み、ヒリヒリ感
・小さな水ぶくれ
・皮膚のカサつき、ひび割れ
・慢性化するとゴワゴワに厚くなることも
強いかゆみでかきむしってしまうと、症状が悪化したり、細菌感染を起こしたりするため注意が必要です。
接触皮膚炎になりやすい人・なりやすい職業
以下のような方は、接触皮膚炎になりやすい傾向があります。
・乾燥肌やアトピー性皮膚炎がある方
・敏感肌の方
・特定の物質に何度も触れる職業の方(美容師、医療従事者、調理師、工場作業員など)
治療法
接触皮膚炎の治療には、以下の3つを組み合わせて行うことが大切です。
①原因物質の特定と除去
まずは何が原因かを特定し、それを極力避けることです。日常生活のエピソードや症状から原因が明らかな場合もありますが、よく分からないことも少なくありません。必要に応じてパッチテストなどの検査を行うこともあります。当院では金属パッチテストとスタンダードアレルゲンパッチテストを行うことができます。ただし暑い時期はパッチテストに適しません。検査を行う時期に関しては診察の際にご相談ください。
②薬による治療
・ステロイド外用薬:炎症を抑えるために用いる薬です。部位や症状の程度に応じて種類を使い分けます。
・抗ヒスタミン薬:かゆみを抑えるために、補助的に処方することが多いです。
③スキンケア
皮膚のバリア機能を守るため、保湿剤でこまめに保湿することも重要です。また洗浄時には低刺激の石鹸やぬるま湯を使いましょう。
予防と日常生活での注意点
接触皮膚炎は、原因物質に触れないことと皮膚を守ることで予防できます。
原因がわかっていない場合も、以下のような事柄に注意しましょう。
・洗剤使用時は綿の手袋をした上にゴム手袋を使用し、肌を防御する
・洗濯時は無香料・低刺激の洗剤を選び、よくすすぐ
・新しい衣類は一度洗濯してから使用する
・植物には不用意に触らない
おわりに
接触皮膚炎は、きちんと原因を知って対策を取ることで、改善や再発予防が可能な病気です。「ちょっとかゆいだけだから」と我慢せず、早めにご相談ください。
参考文献
・Scheinman PL, et al. Nature Reviews Disease Primers. 2021.
・Wahlberg JE, Lindberg M: Patch testing. In: Frosch PJ,Menne T, Lepoittevin JP(eds) : Contact Dermatitis, 4th Ed, Germany, Springer, 2005, 366―386.
・松永佳世子:日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会の歴史,J Environ Dermatol Cutan Allergol, 2008; 2: 427―442.
・接触皮膚炎診療ガイドライン2020
よくあるご質問
- 原因がよくわからないのですが、かぶれてしまいます。原因は検査で確実に分かりますか?
- パッチテストという検査で、アレルギーの原因物質を調べることができます。残念ながら、100%原因が判明する検査というわけではありませんが、2025年現在における最新のガイドラインには「アレルギー性接触皮膚炎の診断に最も有用な検査法である」と記載されています。
- 治療にステロイドを使うのが不安です。大丈夫ですか?
- 適切に使えば安全性は高く、症状の改善が早まります。当院では薬の使用方法や注意点に関してもきちんとご説明しますのでご安心ください。