
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、頭皮や顔など、皮脂の多い部分に赤み・かゆみ・フケなどの症状が出る皮膚の炎症です。あまり聞きなじみはないかもしれませんが、幅広い年齢層で見られるごく一般的なトラブルの一つです。このページでは脂漏性皮膚炎の原因や治療法、日常生活で気をつけたいポイントまで、わかりやすくご紹介します。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎は顔や頭皮など皮脂の多い部分にできやすい、見た目が特徴的な湿疹の一種です。顔では眉のまわりや鼻のわきに、赤みやカサつきがあらわれることが多く、頭皮にできた場合は赤みやかゆみに加え、フケの量が増えることがあります。中にはフケが分厚くこびりついたようになることもあります。また胸・背中・わきの下など、頭部以外の部位にも症状が出ることがあります。乳児では「乳児脂漏性湿疹」として生後数週間から見られることがあり、頭皮に黄色っぽいフケや赤みが出るのが特徴です。これは病気というよりも成長にともなう一時的な皮膚の変化であることが多く、自然に軽快するケースがほとんどです。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎は皮脂分泌量の増加、マラセチア菌の増殖、そして皮膚の免疫のバランスが崩れることで発症すると考えられています。マラセチア菌とはカビの一種で、健康な人の肌にも住みついている常在菌です。皮脂を好む性質があり、皮脂が多い場所で増えすぎると皮膚に炎症を起こす原因となります。また、ストレス・疲れ・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れなども影響して症状が悪化する場合があります。まとめると、以下に当てはまる方は脂漏性皮膚炎になりやすい傾向があるといえるでしょう。
・脂性肌の方
・高温多湿の環境で生活している方
・睡眠不足、ストレスが多い方
・免疫力が低下している方
治療法
脂漏性皮膚炎は適切な治療を行うことで改善が見込めます。皮膚の状態や症状の程度に合わせて、以下の治療を組み合わせていきます。
・抗真菌薬の塗り薬:マラセチア菌の増殖を抑える効果があります。場合によっては、抗真菌作用のあるシャンプー(市販品)をオススメすることもあります。
・抗真菌薬の飲み薬:塗り薬で効果が不十分な場合や、広範囲に症状がある場合に使います。
・ステロイド外用薬:炎症やかゆみが強い場合に使用されます。長期使用は副作用のリスクもあるため、使用方法には注意が必要です。
日常生活における注意点
脂漏性皮膚炎は症状が良くなっても再発しやすい病気なので、日頃のケアがとても大切です。日常生活では、以下の点に気をつけましょう。
・洗顔・洗髪は「とにかく優しく・ぬるま湯で・こすらない」
洗顔は1日2回・洗髪は1日1回を目安に洗いましょう。洗う際、強くこすったり、熱いお湯で洗ったりすると、皮膚が刺激を受けたり皮脂の分泌量が増えて症状が増悪することがあります。とにかく優しく洗うことを心がけましょう。
・洗顔料やシャンプーの選び方
洗顔料やシャンプーは低刺激で保湿成分入りのものを選びましょう。敏感肌用、脂性肌用や、抗真菌(抗カビ)成分配合などと書かれた製品がオススメです。
・保湿は必要?
脂漏性皮膚炎の方の肌は、皮脂が多くても角層の水分は少ないことがあります。そのため、保湿も有効です。ベタつきにくいタイプの保湿剤を使用すると良いでしょう。
・生活習慣を整える
睡眠不足や疲れ、精神的ストレスも症状に関与する可能性があると言われています。十分な睡眠や適度な気分転換も治療の一環と考えて、無理のない生活リズムを心がけましょう。
まとめ
脂漏性皮膚炎は、正しい治療で改善が見込める皮膚炎です。「自分でケアしても良くならない」「何度も繰り返して困っている」そんな時は、当院までお気軽にご相談ください。
参考文献
・Jackson JM, Alexis A, Zirwas M, Taylor S. “Unmet needs for patients with seborrheic dermatitis.” Journal of the American Academy of Dermatology 90, no. 3 (2024): 597-604.
・Woolhiser L, Keime C. “Nutrition, Obesity, and Seborrheic Dermatitis: A Systematic Review.” Cureus. 2023.
よくあるご質問
- 脂漏性皮膚炎は他の人にうつりますか?
- いいえ、脂漏性皮膚炎は感染症ではありません。原因の1つとなる「マラセチア菌」も、多くの人の皮膚に住みついている「常在菌」です。これが皮脂の多い場所で増えすぎたときに脂漏性皮膚炎を引き起こすと言われていますが、他の人にうつる心配は特にありませんので、ご安心ください。
- 治るまでにどれくらいの時間がかかりますか?また、完治しますか?
- 症状の程度や治療への反応によって異なります。経験上は、軽症であれば数週間以内の治療で改善することが多い印象です。再発を繰り返す場合は、症状が落ち着いた後も予防的なケアが必要となり、「完治させる」というよりも「コントロールする」のが目標になります。しっかりとケアを続けることで症状をほとんど出さずに過ごすことも可能になりますので、上手に付き合っていきましょう。
- 市販の薬やシャンプーでも治せますか?
- 市販の製品で改善することもありますが、効果が不十分だと感じる場合や症状が強い場合には、医師の診察を受けることをおすすめします。
- 食べ物で気をつけることはありますか?
- 脂漏性皮膚炎と食事の因果関係は明確には分かっていませんが、いくつかの研究では高脂肪・高糖質の食生活が病状の悪化に関与する可能性が指摘されています。低脂肪・低糖質の食事を心がけることで症状が改善するかもしれませんが、脂肪や糖を多く含むものを控えるべきとまでは言えないと思います。