湘南ジンベエ皮膚科

乾癬





尋常性乾癬について

乾癬(かんせん)とは

乾癬(かんせん)とは、皮膚が赤く盛り上がり、白いカサカサしたフケのようなものが出る病気です。これらの症状は肘・膝・頭・背中などに出ることが多いです。かゆみなどの不快感だけでなく、見た目の問題で悩む方も少なくありません。日本国内には約43万人の患者さんがいると推定されており、決して珍しい病気ではないと言えます。

乾癬の原因

乾癬は、皮膚の細胞が生まれ変わるスピードが異常に早くなる病気です。通常の皮膚では、約4週間かけて新しい細胞が古い細胞と入れ替わりますが、乾癬ではこのサイクルが数日で起こるため、未熟な細胞がどんどん押し上げられて皮膚に蓄積し、炎症や赤み、鱗屑を引き起こします。

この異常な反応の背景には、免疫システムの過剰な働きがあります。乾癬は自己免疫疾患の一つとされており、感染症や外傷、ストレス、薬剤などが発症のきっかけになることもあります。さらに、遺伝的な要因も関係しており、ご血縁に乾癬の患者さんがいる場合はご自身にも発症するリスクが高まります。

乾癬の主な症状とタイプ

症状は、境界がはっきりとした赤い発疹と、その表面にできる白いカサカサしたフケのようなもの(鱗屑:りんせつ)が特徴です。主に頭皮、肘、膝、臀部、爪などに出やすく、爪が変色したり厚くなったりすることもあります。皮膚の症状はかゆみを伴うこともあり、掻くことで悪化する場合もあります。関節に痛みや腫れを伴う方もいます。

乾癬にはいくつかのタイプがあります。最も一般的な「尋常性乾癬」のほか、小児に多く見られる「滴状乾癬」、関節に症状が出る「関節症性乾癬」、膿をもつ発疹が出る「膿疱性乾癬」、全身が赤くなる「乾癬性紅皮症」などが知られています。

治療の選択肢

乾癬の治療は、患者さんの症状の程度や範囲、生活スタイルに合わせて段階的に行われます。

まずは皮膚に直接塗る外用薬が基本です。症状が広い範囲にわたる場合や、外用薬の効果が不十分な場合は、内服薬や光線療法が検討されます。

外用薬の例

・ステロイド外用薬:炎症やかゆみを素早く抑える効果があります。

・ビタミンD外用薬:皮膚の細胞の増殖を緩やかに整え、副作用が少なく、長期使用にも適しています。

内服薬の例

・PDE4阻害薬:炎症の原因となる物質を抑えます

・レチノイド:皮膚のターンオーバーを整えます

・免疫抑制剤:免疫の過剰な働きを抑える作用があります

光線療法の例

・ナローバンドUVB:311±2nmの波長の紫外線を患部に照射する治療法

・エキシマライト:308nmの波長の紫外線を高強度で限局した部位に照射する治療法

分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)について

他にも、近年注目されているのが「分子標的薬」です。特定の炎症物質に作用する薬で、中等症から重症の乾癬に使用されます。慎重な管理が必要な治療法のため、規模の大きな病院で導入されるケースが多いです。当院ではお取り扱いがございませんのでご了承ください。

全身との関連性:高血圧や糖尿病との関係

尋常性乾癬は皮膚だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼすことがあるとされています。その理由のひとつは、乾癬が「慢性的な炎症状態」を起こす病気であるという点にあります。近年の研究では、乾癬の患者さんでは以下のような生活習慣病のリスクが高まることが分かっています。

・高血圧

・糖尿病

・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)

・心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患

これらの病気はいずれも慢性的な炎症と密接に関連しており、乾癬による体内の炎症が全身に波及することで、代謝系の病気を引き起こしやすくなると考えられています。そのため、皮膚症状の管理と同時に、血圧・血糖・脂質などの内科的な検査やケアも大切です。皮膚科では必要に応じて内科と連携し、総合的な健康管理を行うことで将来的な合併症を防ぐことも治療目的の一つとしています。

日常生活での注意点

治療と並行して、日々の生活習慣にも注意を払うことで症状の安定に役立ちます。

・スキンケア

保湿剤をこまめに使い、乾燥から皮膚を守りましょう。また紫外線は適度であれば症状改善に役立つこともありますが、過度な日焼けは症状悪化の原因となります。

・入浴習慣

熱すぎるお湯は避け、38〜40度のぬるま湯で10〜15分程度の入浴にしましょう。体を洗う時は低刺激の石けんを使い、泡でやさしく、ゴシゴシこすらずに洗ってください。

参考文献

・Puig L, Daudén E, 他. Persistence and effectiveness of guselkumab treatment in patients with moderate-to-severe plaque psoriasis: The SPRING study. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2025;39(Suppl 1):27–37.






執筆医師紹介


─執筆医師─

達也執筆profire

塩味達也
湘南ジンベエ皮膚科 院長|日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2013年埼玉医科大学卒業後、大学病院・がんセンター・総合病院・地域クリニックで皮膚科診療に従事。現在、湘南ジンベエ皮膚科院長。医療記事Webライターとしての執筆歴も豊富。


よくあるご質問

尋常性乾癬は人にうつりますか?
いいえ。乾癬は免疫の異常による疾患です。他人に感染することはありません。
完治することはありますか?
現在のところ乾癬を完全に治すことは難しいですが、治療によって症状を長期間コントロールし、日常生活を快適に送ることは十分可能です。治療法の選択肢は豊富にあり、医師と相談しながら適切な方法を見つけていくことで、日常生活の質を改善することが期待できます。
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