
尋常性疣贅(ウイルス性のいぼ)
尋常性疣贅(イボ)とは?
あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」という言葉は、手や足などにできる、俗にいう「イボ」のことです。尋常性疣贅はウイルス感染症の一種で、子どもから大人まで誰にでも起こりえます。この記事では、原因となるウイルス(ヒトパピローマウイルス:HPV)の特徴、治療法や予防策、生活の中で気をつけたいポイントまで、皮膚科医の視点でわかりやすくお伝えします。
尋常性疣贅の原因と症状
尋常性疣贅の原因ウイルスは、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)といいます。HPVには100種類以上の型があり、中でも2型・27型・57型などが尋常性疣贅の原因になります。皮膚の小さな傷からウイルスが侵入し、表皮細胞に感染して角質が異常に増えることでイボができます。小さな傷への直接接触で感染するほか、ウイルスが付着したタオルやスリッパ、プールの床などを介して間接的に感染することもあります。
尋常性疣贅は、表面がザラザラとしたやや硬い隆起です。数mmから始まり、大きくなると数cm程度まで成長します。1つだけできることもあれば、多発することもあります。
治療法の選び方と日本皮膚科学会の推奨
日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」では、複数の治療法について科学的根拠(エビデンス)と推奨度を評価し、適切な治療選択を支援する指針が示されています。
ここに記載した以外にも多くの治療法があります。液体窒素による治療は保険診療の範囲で広く行われており、一般的に第一選択となる治療法です。ただし、それのみでは治療が長引くこともあるため、他の治療法との組み合わせや適切な選択が重要になります。
当院では、日本皮膚科学会のガイドラインに基づき、イボの部位や数、患者さんの年齢、生活スタイルなどを総合的に考慮し、一人ひとりに合った治療法をご提案しています。
日常生活でできる予防と再発対策
免疫力やお肌のバリア機能が低下していると、HPVに感染しやすくなります。バランスの取れた食事や睡眠をとり、適切なスキンケアを意識することも尋常性疣贅の予防につながります。
まとめ
尋常性疣贅は、身近にあるウイルスによって引き起こされる皮膚疾患です。治療には時間がかかることもありますが、医師と相談しながら継続することで改善が見込めます。気になる症状があれば、早めに皮膚科を受診しましょう。
参考文献
・Witchey DJ, et al. Plantar Warts: Epidemiology, Pathophysiology, and Clinical Management. JAOA. 2018;118(2):92-105.
・尋常性疣贅診療ガイドライン2019
よくあるご質問
- イボは自然に治ることもありますか?
- はい、尋常性疣贅は数か月〜数年かけて自然に消えることもあります。ただし、放置している間に数が増えたり、他の部位や他人にうつることもあるため、早めの受診をおすすめします。
- イボを自分で削ったり、取ったりしても大丈夫ですか?
- 自己処理はおすすめできません。無理に削ったりすると出血や感染のリスクがあるうえ、ウイルスが周囲に広がってしまうこともあります。