
母斑細胞母斑(ほくろ)
母斑細胞母斑(ほくろ)について
皮膚にある黒っぽいできもの。「これってほくろ?」「なんとなく大きくなってきた気がするけど、病院を受診した方がいいのかな…?」と悩まれる方は少なくありません。
ホクロは医学的には「母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)」と呼ばれ、色素を作る細胞(メラノサイト)が集まってできた良性の皮膚病変です。多くは生まれつき存在します。加齢に伴って自然に現れることもありますが、特に問題はありません。ただ中には、悪性腫瘍との見分けがつきにくいこともあるため、注意が必要です。
この記事では、患者さんからよくいただく質問や不安に答える形式で、母斑細胞母斑についてわかりやすく解説したいと思います。
よくあるお悩み・ご相談内容
①ほくろの悩みで受診していいのかわからない
もちろん大丈夫です。まずは「ほくろ」で良いのかどうか、確認する目的だけでも結構です。皮膚科医が専門的な視点で丁寧に診察します。そのほか「急に大きくなった」「形がいびつ」「色がまだら」「出血やかゆみがある」などの症状がある場合も、皮膚科でチェックを受けることをおすすめします。
②もし皮膚がんだったらと思うと不安
ごくまれに、悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんが、ほくろと似た見た目で生じることがあります。そこで、“ABCDEルール”と呼ばれるセルフチェック項目をご紹介します。
【ABCDEルール】
A(Asymmetry):左右非対称な形
B(Border):境界がギザギザだったり、はっきりしない
C(Color):色がまだらで、濃い部分とうすい部分がある
D(Diameter):直径が6mm以上の大きさ
E(Evolution):大きさ、色、形が変化してきた、出血したなど)
ただしこれはあくまでも目安であり、これだけで良性・悪性の確定はできません。慣れないと、そもそも上記の項目に当てはまるかどうかの判断が難しいケースもあると思います。一つでも当てはまるかもしれないと感じるようなら、皮膚科の受診をおすすめします。
③診察や検査って、どんなことをするの?
診察ではまず見た目のチェック(視診)を行い、必要に応じてダーモスコピーという拡大鏡を使って病変を詳しく観察します。触診なども同時におこなっていきます。
がんの可能性がある場合は、組織を採取して調べる病理検査を行うことがあります。病理検査は皮膚の一部を採取するため、多くの場合局所麻酔をした後、メスで皮膚を切り取る必要があります。通常は5〜10分程度で終わる、簡単な手術のようなものだと思ってください。なお実際に病理検査を行う場合には、事前に詳細なご説明をしますのでご安心ください。
④美容目的でほくろを取りたい
見た目が気になる場合、美容目的で除去することも可能です。治療方法には以下のような選択肢があります。
・外科的切除(手術):小さなほくろで、難しい場所(例:眼の近くなど)でなければ当院でも日帰り手術が可能です。縫合が必要になるため傷跡は残りますが、病変全てを取り除ける可能性が高いです。病理検査にて悪性でないことを確認できるのも大きなメリットです。
・レーザー治療:浅いほくろに有効です。手術よりも傷跡は小さく済みやすいです。病理検査は行いにくいのと、比較的再発しやすいのが難点です。また、医師が悪性病変である可能性を否定できないと判断した場合にはレーザー治療は行えません。
当院では、患者さんごとに病変の大きさや部位に応じて、最も適していると思われる治療方法をご提案させていただきます。
まとめ
気になる“ほくろ”があると、不安や悩みがつきものです。
「これって放っておいても大丈夫?」「できれば取りたいけど、どうすれば?」
そんな疑問に寄り添いながら、一人ひとりに合った診断・治療をご提案します。まずは気軽にご相談ください。
参考文献
・清水宏. あたらしい皮膚科学第3版. 中山書店
・Muradia I, et al. A Clinical, Dermoscopic, and Histopathological Analysis of Common Acquired Melanocytic Nevi in Skin of Color. J Clin Aesthet Dermatol.2022; 15(19):41-51.
・日本皮膚科学会ガイドライン 皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019