
皮膚悪性腫瘍
皮膚がんについて:種類・症状・診断と予防
日本では年間およそ2万人が皮膚がんと診断されており、決して珍しい病気ではありません。皮膚がんにはいくつかの種類があり、それぞれ見た目や進行の仕方が異なります。ここでは、皮膚がんの代表的な種類・診断法・治療と予防について、わかりやすくご紹介します。
皮膚がんの主な種類
・基底細胞がん:一見ホクロのようにも見える黒い皮膚腫瘍です。皮膚がんの中で最も多いタイプで、特に高齢者の顔にできやすい傾向があります。他の場所に転移することは少ないですが、腫瘍の周りの組織を破壊しながら進行する場合があります。
・有棘細胞がん:手や顔、頭皮など日光にさらされる場所に多く現れます。症状は様々で、こぶのような見た目のこともあれば、潰瘍や分厚いかさぶたのような病変としてあらわれることもあります。放置すると大きくなったり、リンパ節や臓器に転移することがあります。
・日光角化症:表皮内がんと呼ばれる、前がん病変です。進行すると有棘細胞癌になります。
・悪性黒色腫:皮ふの色素をつくる「メラノサイト」という細胞ががん化したもので、「メラノーマ」とも呼ばれます。ホクロやシミに似ていて気づかれにくいこともありますが、非常に進行が速く、早期に転移する可能性のある悪性度の高いがんです。
・ボーエン病:表皮内がんと呼ばれる、前がん病変です。がんに進行するとボーエン癌とも呼ばれます。赤くカサついた湿疹のようにも見えるため注意が必要です。
・乳房外パジェット病:外陰部や肛門まわりにできる特殊ながんです。そもそも気付きにくい場所にできる上、湿疹と誤解されやすいため発見が遅れがちです。
皮膚がんの診断と治療
皮膚がんの診断は、皮膚腫瘍の診療に慣れた皮膚科医や形成外科医など、皮膚病変を多く診ている医師による評価が重要です。診察の際は視診と触診に加え、ダーモスコピーという拡大鏡を使って観察したり、必要に応じて皮膚の一部を採取(皮膚生検)して診断していきます。
治療の基本は外科手術ですが、がんの種類や進行度によって抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療を併用することもあります。
皮膚がんを予防するには
皮膚がんの原因は種類によって異なりますが、主に加齢や紫外線の影響が関係していると考えられています。そのため日頃から紫外線対策を続けることが、皮膚がん予防につながる可能性があります。
日焼け止めを使用する際には、SPF30以上・PA+++以上のものを選ぶのがおすすめです。詳しく知りたい方は 日焼け対策のブログをご覧ください。
まとめ
もし心配なできものがある場合は、まずはお気軽に皮膚科へご相談ください。
すぐに受診できない場合、日常的に観察・記録しておくことも大切です。スマホで時々写真を撮っておくと、変化を見比べるのに役立ちます。セルフチェックとしても、医師への相談の際にもぜひご活用ください。
参考文献
・日本皮膚科学会. 悪性黒色腫診療ガイドライン 2023年版
・Weinberg D, Gomez-Martinez RA. Vulvar Cancer. Obstet Gynecol Clin North Am. 2019;46(1):125-135.
よくあるご質問
- 皮膚がんはなぜできるの?
- 皮膚がんの種類によっても異なりますが、加齢・紫外線・皮膚の慢性炎症・古い火傷の傷跡などが皮膚がんの発生に関係するといわれています。これらの要因から細胞がダメージを受けることで、異常な細胞増殖の引き金になっていると考えられます。
- 手のひらや足の裏にできたホクロはがんになるのですか?
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近年、TVや新聞で啓発される機会が増え、このような話を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。ただし「手足のホクロはがんになりやすい」や「皮膚がんは手足にできやすい」というのは誤解です。
手足のできものの9割以上は良性のホクロやイボです。特別、がんになりやすいということもありません。
ただし日本人の場合、本文中でもご紹介した【悪性黒色腫】のうち、約40〜45%が手や足にできるといわれています。悪性黒色腫は命に関わる病気ですので、見逃さないように注意しましょうという啓発なのです。
ただ、ご自身で悪性黒色腫か否かを判断するのはなかなか難しいと思います。気になるホクロを見つけたら、ぜひ一度皮膚科へご相談ください。