帯状疱疹
帯状疱疹とは?症状・原因・治療・予防を皮膚科専門医がわかりやすく解説
「ピリピリする」「チクチク痛い」「赤いブツブツが出てきた」
このような症状があると、「もしかして帯状疱疹かもしれない」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、誰にでも起こりうる身近な病気です。
一方で、早期に気づき、適切な治療を開始することで、症状の悪化や痛みが長引くリスクを減らせる可能性があります。
ここでは、帯状疱疹の原因・症状・合併症・治療・予防(ワクチン)について、皮膚科専門医の立場から分かりやすく解説します。
帯状疱疹の原因と病態
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus:VZV)が原因で起こります。子どもの頃に水ぼうそうにかかった方や、水痘ワクチンを接種した方でも、理論上は発症する可能性があります。
このウイルスは、水痘罹患後や水痘ワクチン接種後に体から完全に消えるわけではなく、神経の根元(神経節)に潜んだ状態で残ります。
通常は免疫の働きによって抑えられていますが、次のような要因をきっかけにウイルスが再び活性化し、神経に沿って皮膚に症状が出ることで帯状疱疹を発症します。
・加齢
・強いストレス
・過労や睡眠不足
・病気や薬の影響による免疫力の低下
帯状疱疹の主な症状
初期症状
帯状疱疹では、皮膚の発疹が出る前に、次のような症状がみられることがあります。
・ピリピリ、チクチクする痛み
・電気が走るような痛み
・虫が這うような違和感
・触れるとヒリヒリする感じ
この段階では見た目の変化が乏しいことも多く、他の病気との区別が難しい場合があります。
皮膚症状
初期の痛みが少なく、皮膚症状に気づいた後に遅れて痛みが出る場合もあります。
・体の片側に、帯状(神経の走行に沿った形)に赤い発疹が出る
・小さな水ぶくれが複数みられる
一般的に、水ぶくれは1〜2週間でかさぶたになり、2〜4週間ほどで皮膚症状は落ち着くことが多いとされています。炎症が強い場合には、傷跡や色素沈着(シミ)が残ることもあります。
帯状疱疹後神経痛という後遺症
皮膚症状が治ったあとも、次のような症状が数か月から数年続くことがあります。
・ズキズキとした痛み
・焼けるような痛み
・違和感が続く
これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
一般に、次のような場合には帯状疱疹後神経痛が起こりやすいとされています。
・高齢の方
・初期の痛みが強かった場合
・治療開始が遅れた場合
・皮疹の範囲が広い場合
完全に防ぐことを保証することはできませんが、早期治療はリスク低減のために重要と考えられています。
注意すべき帯状疱疹の合併症
帯状疱疹は、発症する部位によって特有の合併症を起こすことがあります。
耳の周囲に出た場合
耳の周囲に帯状疱疹が出た場合、ラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる状態になることがあります。
水痘・帯状疱疹ウイルスが顔面神経に炎症を起こすことで、顔の動かしにくさ(顔面神経麻痺)を生じることがあります。
また、顔面神経の近くを走行する前庭蝸牛神経(第VIII脳神経)にも炎症が及ぶことがあり、その結果として難聴、耳鳴、めまいなどの聴覚・平衡感覚に関わる症状を伴うことがあります。
これらの症状を認める場合には、皮膚科での治療に加えて、必要に応じて耳鼻咽喉科での評価や治療が行われます。
目の周囲に出た場合
目の周囲に症状が出た場合、角膜炎やぶどう膜炎などの眼の合併症を起こすことがあります。
鼻先に皮疹が出る場合(ハッチンソン徴候)は、眼の合併症を伴う可能性が高まるとされています。
このような場合は、皮膚科での治療に加え、必要に応じて眼科での評価や治療が行われます。
まれな合併症
頻度は高くありませんが、ウイルス性髄膜炎や脳炎などを起こすことがあります。
強い頭痛や発熱、意識障害などがみられる場合は、速やかな受診が必要です。
帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬
帯状疱疹の治療では、原因ウイルスの増殖を抑えるために抗ウイルス薬を使用します。
・アシクロビル
・バラシクロビル
・ファムシクロビル
・アメナメビル
これらの薬剤は、発症後できるだけ早く開始することが重要とされています。
痛みの治療
痛みの程度に応じて、次のような薬剤を組み合わせて治療を行います。
・アセトアミノフェン
・NSAIDs
・プレガバリン
・トラマドール
・神経障害性疼痛に用いられる薬剤
内服治療で十分な効果が得られない場合には、ペインクリニックで神経ブロックなどの治療が検討されることもあります。
帯状疱疹の痛みは、冷やすより温めた方が楽に感じる方もおり、腹部の場合には腹巻などを併用されることもあります。
帯状疱疹の予防
帯状疱疹の予防策の一つとして、ワクチン接種があります。
生ワクチン
接種回数は1回です。免疫が大きく低下している方などでは接種できない場合があります。
サブユニットワクチン(不活化ワクチン)
接種回数は2回です。長期的な効果が期待され、予防効果が高いことが報告されています。免疫が低下している方でも接種できる場合がありますが、個別の判断が必要です。
一般に50歳以上の方では、ワクチン接種が検討されます。
ワクチンは発症を完全に防ぐことを保証するものではありませんが、発症リスクや重症化、帯状疱疹後神経痛のリスクを下げる効果が期待されています。
自治体によっては費用助成制度がある場合もありますので、お住まいの地域の情報をご確認ください。
まとめ
・帯状疱疹は水ぼうそうウイルスの再活性化で起こります
・初期に痛みだけが出ることがあります
・早期治療で症状や後遺症のリスクを下げられる可能性があります
・50歳以上の方ではワクチンによる予防も選択肢の一つです
気になる症状がある場合は、我慢せず、早めに医療機関へご相談ください。
よくある質問
帯状疱疹は人にうつりますか
帯状疱疹そのものが帯状疱疹としてうつることはありません。ただし、水ぼうそうにかかったことがない方が、帯状疱疹の水ぶくれの内容物に触れると、水ぼうそうとして感染する可能性があります。
ワクチンは接種した方がよいですか
ワクチン接種は任意であり、年齢や基礎疾患、治療状況、費用面などを考慮して検討します。帯状疱疹は加齢とともに発症リスクや後遺症の問題が大きくなるため、50歳以上の方では予防策としてワクチン接種が検討されます。どのワクチンが適しているかは、医師と相談のうえ判断することが大切です。
参考文献
帯状疱疹診療ガイドライン 2025
Crouch AE, et al. Ramsay Hunt Syndrome. StatPearls Publishing; 2024.

新聞や雑誌でのコラム執筆経験もあり、「塗るを楽しく」を合言葉にした絵本も製作中です。