粉瘤
粉瘤とは?原因・症状・治療法を皮膚科専門医がわかりやすく解説
皮膚にできる「しこり」としてよく知られている粉瘤(ふんりゅう)。
「いつの間にかできていた」「押すと臭いものが出た」「急に赤く腫れて痛くなった」などの経験がある方も多いのではないでしょうか。
粉瘤は、誰にでも起こりうる非常に身近な良性の皮膚腫瘍です。多くの場合は命に関わる病気ではありませんが、炎症を起こすと強い痛みや腫れを伴い、日常生活に支障をきたすこともあります。
このページでは、粉瘤とは何か、症状・原因・治療法・手術の必要性について、皮膚科専門医の立場からわかりやすく解説します。
粉瘤とは?(アテローム・表皮嚢腫)
粉瘤は、医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」「アテローム」と呼ばれることもある皮膚の良性腫瘍です。
皮膚の下に「袋状の構造(嚢腫)」ができ、その中に以下のようなものが少しずつ溜まっていくことで、しこりとして触れるようになります。
・古い角質(皮膚の垢)
・皮脂
この袋は自然に消えることはなく、内容物が増えるにつれて、ゆっくりと大きくなるのが特徴です。
粉瘤の主な症状
炎症を起こしていない場合
・痛みやかゆみはほとんどない
・皮膚の下に弾力のあるしこりを触れる
・数mm〜数cmまで徐々に大きくなる
・中央に黒い点(開口部)が見えることがある
この段階では「ニキビ」「脂肪の塊」と勘違いされることも少なくありません。

炎症を起こした粉瘤(炎症性粉瘤)
袋が破れたり、細菌感染を起こすと以下の症状が出ます。
・赤く腫れる
・強い痛み
・熱感
・圧痛(押すと痛い)
・白くチーズ状の内容物や、悪臭のある膿が出る
この状態になると、日常生活に大きな支障が出ることもあり、早めの皮膚科受診が必要です。

粉瘤ができやすい年齢・性別・部位
粉瘤は年齢や性別を問わず発症しますが、
・20〜50代に多い
・男性にやや多い
という傾向があります。
粉瘤は放置しても大丈夫?
小さく症状がない粉瘤であれば、経過観察がひとつの選択肢です。
しかし、以下の場合は治療(手術)を検討した方がよいでしょう。
・何度も炎症を繰り返す
・大きくなり、服や下着に擦れて不快、違和感を感じる
・見た目が気になる(顔・首など)
粉瘤は自然に治ることはほとんどありません。袋が残っている限り、再び炎症を起こす可能性もあります。
粉瘤の治療法
① 切開排膿(炎症が強い場合)
赤く腫れて膿が溜まっている場合は、
・局所麻酔後、小さく切開して膿を出す
という処置を行います。
ただし、これは応急処置であり、袋自体は残るため、根治術のために後日あらためて摘出手術を行うこともあります。
② 粉瘤摘出術(根本治療)
粉瘤を袋ごと完全に取り除く手術です。
・局所麻酔で日帰り手術が可能(保険適応)
・所要時間は30分前後
※手術後の注意点と再発予防
・医師の指示どおりに連日処置を行う
・強い運動や入浴は控える
袋を完全に摘出できていれば再発リスクは低いですが、一部が残ると再発することがあります。
まとめ|粉瘤かな?と思ったら皮膚科へ
粉瘤はよくある良性腫瘍ですが、
・炎症を起こすと強い痛み
・繰り返すと生活の質が低下
につながります。
「ただのしこり」と自己判断せず、気になったら早めに皮膚科専門医に相談することが、安心・安全な治療への第一歩です。
参考文献
田村佳信, 岡崎正, 太田純子, 川津智是.
外毛根鞘性嚢腫-自験11例と表皮嚢腫322例との比較検討.
皮膚 1991;33(2):99–101.

新聞や雑誌でのコラム執筆経験もあり、「塗るを楽しく」を合言葉にした絵本も製作中です。